災害に負けないレジリエンス住宅⑥ 家屋崩壊を防ぐために 強度が高い地盤と基礎を
調査の結果、必要に応じて地盤改良
災害に備えた住まいを考える「レジリエンス住宅」シリーズ。6回目は家を支える地盤や基礎について。和歌山県建築士会の耐震診断・判定委員で、1級建築士の田中梨穂さんに聞きました。
地盤の良しあしは、建物や住人の安全性に大きく影響します。「地盤が緩いと、地震や水害などで家が傾き、沈下する可能性があります。家屋や住む人を守るために、家を建てる前に地盤調査を行って、必要に応じて地盤を改良します」と、田中さんは説明します。
地盤調査には、「スクリューウエート貫入試験」と「ボーリング調査」などがあります。「前者は一般的な家屋が対象。後者は、鉄骨造など家の総重量が大きかったり、液状化現象の恐れがあったりする土地に対して行われます」と田中さん。「調査の結果、地盤の硬さを表す『地耐力』の数値が、1平方㍍当たり30kN(キロニュートン)以下、または、液状化の恐れがある場合は、地盤改良が必要です」
主な地盤改良には、「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管杭(くい)工法」があります。「表層改良」は、地表から2㍍未満の軟弱地盤で行われ、セメント系固化材を土壌に混ぜて地盤を固めます。軟弱地盤が地表から2㍍以上深く、「表層改良」で強度を出すのが難しい場合は、「柱状改良」で施工。柱状の杭を設けて、地中から家を支えます。軟弱地盤がより深い場合は、鋼管の杭を打ち込む「小口径鋼管杭工法」が行われます。「費用は、地盤の状況や工法によっては高額になることも。改良が必要だと考えられる場合は、あらかじめ予算に見込んでおきましょう」
家の土台となる基礎は、建物の重量や、地震・台風などから受ける外力を地盤に伝える役割があります。床下全面を、鉄筋を入れたコンクリートで覆う「べた基礎」と、主要な柱や壁の下にだけ敷設する「布基礎」があります。「地耐力20~30kN/平方㍍はべた基礎、30kN/平方㍍以上が布基礎の目安です」と、田中さん。「地盤や基礎など“見えないところ”にも気を配り、災害に強い家づくりを」と、アドバイスしてくれました。
和歌山リビング新聞2024年10月19日掲載